牛すじ製品、加工の流れ

一粒一粒、手作業で丁寧に

.ほどよい茹で上がりが決め手、ボイル場

 
ギラリと光る銀色の釜からもうもうと立ちのぼる白い湯気。あたりに漂う肉を茹でる匂い。牛すじ製品の加工は、工場のなかでもひときわ広く空間をとった、通称「ボイル場」で始まります。ボイル場には、ステンレス製・正方形の蒸気釜が何台も並び、釜の中では、ゴロゴロとした牛肉の塊が茹でられています。
ここは、九州北部の北九州市に隣接する直方(のうがた)市、筑前屋北九州新入工場。マルニチフードが販売する国産牛すじ製品の製造現場です。日本全国の産地から供給された国産の牛肉が、この工場で牛すじ製品に加工され、出荷されていきます。



のどかな工場の周辺環境

マルニチフードの牛すじ製品は、下処理済みですぐに調理に使えることが特徴です。アキレス、メンブレン、赤身系のすじ肉などさまざまな部位を使い、串さしタイプや、串なしで粒をまとめてパッケージしたものなど、その種類は多岐にわたります。多彩なラインナップの牛すじ製品すべての加工がこの工場で行われています。
ボイル場の釜の前では、1つの釜につき、1人のスタッフが立ち、長さは胸元まではあろうかという大きな柄杓(ひしゃく)を使って、釜の中の肉を大きくかき混ぜたり、時には突ついたりして茹で上げの調子をみています。
1度に茹でる牛肉の量は、およそ200キロ。それを約1メートル四方のステンレスの蒸気釜で摂氏85度以上の熱湯でボイルしていきます。相手は牛肉だから丁寧なアク取りも必要です。こまめなアク取りを続けながら、スタッフは茹で上がりの時を待ちます。
「今、うちの工場でボイル作業を最初から最後まで安心して任されられるのは、私を含めて3人だけです。」と志村工場長。ボイル工程の難しさはどこにあるのでしょうか?
「ひとことで言えば、バランスです。ほどよいボイル具合に仕上げること。そのための見極めが肝心です」
「ボイルが足りないと、プルプル・コリコリした牛すじ独特の食感が出ません。また、仕上がりが柔らすぎると、ボイルのあとの手作業による加工が非常にやりづらくなってしまいます。」
「一方で、ボイルしすぎると、肉の旨味が茹で汁の方に逃げてしまうんです。ボイルしたあとお肉を氷水で締めますが、茹で汁は捨てるので、美味しさをむざむざ捨てることになってしまいます。あとは、食感ですね。ボイルしすぎると硬くなりすぎてしまう。」
さらには牛すじ特有の事情も。一口に牛すじと言っても、アキレス、メンブレン、赤み系のすじ肉と、部位によっての性質の違い、仕入れた肉質の微妙な違い、季節や天候の違いによって、最適なボイル時間は変わります。
ボイルを担当するスタッフは、釜のお肉の色を目で見ることはもちろん、柄杓(ひしゃく)でかき混ぜる重さや感覚で調子を感じつつ、最後は、お肉の一部を取り出して触り、時にはカットして仕上がりを確認します。
それでも「牛すじの各部位を困難なくボイルできるようになるまでには、3年はかかる」のだといいます。
ボイルが終わると、茹で上がったお肉を釜から一度あげて、そのまま一気に大きな塊の氷が入った冷水で、締めます。これによって肉の質感が安定し、美味しさを閉じ込められます。そして材料は一晩、冷水に入ったまま冷蔵され、次の加工へと渡されます。



ボイル後、一気に氷水の入ったケースへ

「ボイルするときは、毎回、緊張しますね。」と再び志村工場長。「最適なボイルが足りなくても過ぎてもダメ、もう取り返しがつきません。ボイルは、やり直しが聞かない作業なのです。」
今日もボイル場では白い湯気が上がります。


.一粒一粒丁寧に、下地処理
 
ボイルを終えた材料は、工場のなかでもひときわ明るい部屋に運ばれます。

ボイル場が「動」なら、この部屋は「静」。スタッフはステンレスの作業台の前に静かに座り、黙々と作業は進みます。
行われるのは材料の下地処理。塊だった材料は、この部屋で、一口大の牛すじの「粒」に変わります。
ここでのスタッフの作業は大きく言って、2種類。まずは、肉に包丁を入れて大きさを整えるカット作業。口にいれやすい大きさを意識して、手元の肉を手際よくカットしていきます。また同時に、ボイルの火の通りが問題ないかも確認します。



食べやすい大きさを意識しながら小分けにしていく

そしてもう1つは、異物チェック作業です。
牛すじはその性質上、汚れや獣毛などが残りやすく、丁寧に取り除く必要があります。材料はすでにボイル場でじっくり茹でられ、茹で汁から上げられ、すでに大半の異物は取り除かれた状態ですが、それでも一本の獣毛も見逃すわけにはいきません。



獣毛1本も見逃さない真剣な眼差し

特に気をつけなければいけないのは白い獣毛。異物チェックの担当は、一粒一粒の材料を必ず一度照明に当てて左右に回して異物チェックを行います。白い獣毛は、照明に反射してキラリと光るので見つけることができるのです。
この部屋が工場のなかでひときわ明るいのはこのためなのです。室内の明るさの基準を800ルクス以上と定め、LED照明を設置して、部屋の明るさを保つ万全の体制で、不純物を取り除いた、純粋な牛すじを取り出せるのです。
こうして下処理は終わります。塊だった肉は、不純物のない純粋な牛すじの粒になりました。角切り製品用の牛すじはこのあと一気に冷凍され、冷凍庫に保管されます。一方、串製品用の牛すじには、次の工程、串さし場へと運ばれます。


.一筋縄ではいかない、串さし作業
牛すじ製品に欠かせないのが、串に刺さったタイプのもの。牛すじといえばこの形状の製品を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
その名の通り、串さしは、下地処理工程で一口大の大きさになった肉を串に刺していく作業ですが、初めたばかりのスタッフは真っすぐに刺すことすらままならないと言います。「毎日やっても、だいたい3年はかかりますね」と志村工場長。
手にとって食べやすい1本の牛すじ串の重さは25グラム。串刺し担当のスタッフは、串1本の重さが基準プラスマイナス1グラムの範囲に収まるよう、刺しては手元の秤で計量することを繰り返して、1本1本、仕上げていきます。
ベテランのスタッフにもなれば、これまでの経験から、手が重さを覚えています。どんな部位の材料でも目で見て手に取れば一粒一粒の重さがわかるため、計量はほぼ一発OK。同じリズムと無駄のない動きで作業を進めることができます。
串刺し作業においてもう1つ重要なのが、原料の温度管理。各串刺し担当スタッフに運ばれてきた原料には、クラッシュしたばかりの新鮮な氷を1日に何度も置くというルールが徹底されています。



1本1本、テンポよく仕上げるベテランの技

串さしで、もっとも難しいのは、赤身と白身を交互に刺したタイプの串。プルプルコリコリの食感の白身と、ざらっとした舌触りと確かな歯ごたえのある赤身とを交互に楽しめるのが特徴のこのタイプは、2つの種類の材料を相手にするので、1種類の材料をさすタイプと比べ、重さの調整に加えて、見た目のバランスも問われてきます。
「美味しそうな見た目、というのがあるんです。赤身は白身よりも大きく見えやすいので、少し白身を多めにするのがコツです」
最後に、串の先端に白身の面状の部位を刺して仕上げ。仕上げられた串は、再び冷凍庫へ運ばれます。


.冷凍保存された牛すじ製品は、出荷の時を待つ
 

加工が終わった牛すじ製品は、工場内にある冷凍庫で保管され、出荷の時を待ちます。室内の温度はマイナス18度。
「肉の保存は、冷凍が原則です」と志村工場長。
家庭では一般的な冷蔵は、冷凍と比べると、解凍の手間がないことがメリット。しかし冷蔵の場合、鮮度は時間とともに落ちてしまいます。特に、ドリップと呼ばれる赤い汁が肉から出てしまうと旨味がなくなってしまいます。
一方、冷凍は、ドリップがでる問題がないため、冷凍が期間を問わずもっとも鮮度を落とさない保存の仕方なのです。
ボイルから串さしまで、ほぼ全て手作業で加工されたマルニチフードの牛すじ製品は、最善の方法で保管され、出荷の時を待っています。
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